Menu

サクシードブログ

Home

2019/1/24

『天声人語』より、転載
中学受験を控えた息子から算数の手助けを頼まれ、自信満々の父親。「月夜の池に鶴と亀があわせて16匹いる。脚を数えると44本。鶴と亀はそれぞれ何匹か」。尋ねられて頭を抱える。xとyの方程式は中学入試に使えない。桂文枝師匠の落語「宿題」である。
▼実社会で鶴と亀を一緒くたに数える機会などまずないだろう。だが受験の準備ともなれば避けては通れない。ひとまず全部を亀(あるいは鶴)と仮定して解くのがミソだ▼和算に詳しい佐藤健一・日本数学史学会長(80)によると、鶴亀算の歴史は4世紀の中国にさかのぼる。登場するのは鶏(または雉〈きじ〉)と兎(うさぎ)。日本に伝わり、めでたくも鶴と亀に替わったという。
▼江戸時代の設問は創意に富む。せしめた反物を窃盗団で山分けする「盗人(ぬすびと)算」。大中小三つの器で油を2等分する「油(あぶら)分け算」。長方形の海苔(のり)を切って正方形に組み替える「裁物一刀(たちものいっとう)」。落語か剣術のような名が想像をかき立てる▼和算は江戸時代、都市から地方へ、支配層から庶民へと広がった。活躍したのは遊歴算家(ゆうれきさんか)。各地を旅して算学を教え、ときには地元の算家に勝負を挑んだ。明治以降、学校教育に「洋算」こと西洋数学が採用されて、和算は表舞台を去る▼和算の例題は読むと舞台が身近で、一問一問に小さなドラマがある。古代中国や江戸の町で、子どもたちがこれらと同じ設問と格闘したかと思うと感慨を覚える。和算の世界はかくも奥深い。ちなみに冒頭の鶴亀算の答えは、鶴10羽、亀6匹です。
★大学入試には必読と言われた「天声人語」…朝日小学生新聞・「天声子ども語」は中学お受験に欠かせないそうです。

教室案内/アクセス

アクセス