塾屋の「危機感」に踊らされていませんか?
先日、ある学習塾の元担当者と話す機会がありました。彼は短期間で小学生・中学生の生徒数を倍増させた実績の持ち主ですが、その手法は実に巧妙です。
まず中学受験を控えた小学生に、平均30点ほどの極めて難しいテストを受けさせ、親には「学校の勉強だけでは通用しない」と不安を植え付けます。
その裏で楽しい理科実験を見せて親を安心させ、最後に「30点」という現実を突きつける。
不安と安心のギャップで「学習診断」へと誘導し、そのまま入会させる……。まさに**「危機感を煽れば、塾屋が儲かる」**という構図です。
しかし、本来の教育とは、あるいは地域に根ざした塾の役割とは「不安を解消するために通うもの」であってはいけないはずです。
私が理想とするのは、**「エラーを恐れて届きそうな球だけを待つ」生徒ではなく、「エラーしてもいいから、届きそうにない球に必死で飛びつく」**生徒を育てることです。
小学生のうちからバッターボックスで「見逃し三振」をして立ち尽くす癖がついてしまうと、中学生になって勉強の難易度が上がったときに、挑戦すること自体を諦めてしまいます。たとえ「空振り三振」に終わっても、全力でバットを振る経験の方が、次への成長に確実に繋がります。なぜなら、その空振りの軌道こそが、自分の限界を知り、新しい技術を身につけるための「自分だけのデータ」になるからです。
こうした**「自分から飛びつく勇気」**を育むために、私たち塾講師に求められるのは、生徒との適切な距離感です。 依存させすぎては自立の芽を摘み、突き放しすぎては不安で動けなくなってしまいます。
小学生、中学生という多感な時期に、生徒が失敗を恐れずに思考のキャンバスへ「大きな図」をフリーハンドで描き、自分の目で見て、手を動かして試行錯誤できる。
そんな「心の安全基地」のような環境を守ることが私たちの使命です。