
「知る喜び」を大切にしよう
★理科や数学が好きになったきっかけを、“興味をもつためのエサのついたフック”というわかりやすい例えを使っています。でも、人生に用意されているはずのそんな“フック”を、誰もが見つけて食いついていけるわけではないような気もするけれど。
★学校などの学びの場で多くの子どもの興味を引くために、常にたくさんの違う“エサのついたフック”を用意し続けるのは非常に難しいことです。
親ならどうでしょう? 1人か2人のわが子の興味、面白がれるポイントは、親ならわかるし用意することもできると思います。
★「面白がれる」という感性はトレーニングによって磨かれていくものです。たとえば、音楽や落語は知れば知るほど面白くなってくる。
「ああ、あの演奏者のこのテクニックはすごい」とか「この落語家の蕎麦をすする芸は逸品だ」とかね。
★理数系科目も同じように、興味を持って接し続けるうちにトレーニングされ、面白みが増して次のグレードに進んでいけるのだと思います。親がそうした興味の最初の一歩に案内してあげられると、その子の世界は大きく広がるのではないでしょうか。
子どもの質問に親が答えられないことも多いし、何をしてあげればいいのだろうかと、悩む場面は少なくありません。
★その解決はいたって簡単です。今はほとんどの情報がインターネット上にあります。子どもが何かを質問してきたら、「そうだね、それはお母さんにもわからないから一緒に調べてみようか」と、リビングや食卓でパソコンやタブレット端末を使って検索すればいいのです。
★「なぜ空は青いのか」と打ち込めば、知りたい答えはいくつも出てくるでしょう。それを「読んでみようか」と促してあげる。そうした働きかけをするだけで、子どもの反応は全然違ってくると思います。
★解決する手だてを教えてあげれば、「知る喜び」を覚え、いずれ一人で解決するようになるでしょう。
東京大学Kavli IPMU機構長 村山 斉